作家名/作品名:北川原温《ミラノ国際博覧会2015日本館 木組インフィニティ》
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「建築の日本展」が、4月25日(水)に森美術館で始まった。普通の展示ではない。六本木ヒルズ ・森美術館の15周年を記念展する記念碑的企画だ。「なぜ建築が?」と思われた方こそ本展を見て欲しい。その答えを眼前に見ることが出来るだろう。
「ミラノ国際博覧会2015日本館」で好評を博した北川原温氏による木組みの壁を通り会場内に入ると、第1展示室では「可能性としての木造」をテーマとした展示を見ることが出来る。
まずは、特異な二重らせん構造を持つ「会津さざえ堂」の模型が目に入るだろう。その奥には磯崎新氏の「空中都市 渋谷計画 1962年 計画案」や、隈研吾氏の「雲の上のギャラリー」など数々の模型や写真が目に入るが、ショーケースに並ぶ竹中道具館所蔵の墨跡鮮やかな大工秘伝の書も必見だ。
第2展示室のテーマは「超越する美学」。
谷口吉生氏による「鈴木大拙館」、樂吉左衞門+竹中工務店による「佐川美術館 樂吉左衞門館」などの模型や映像が並ぶ。日本の美を現代の技術をもって大胆にして細心に表現した建築だ。
第3展示室のテーマは「安らかなる屋根」。
会場中央にある妹島和世氏の「荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館) 」や「京都の集合住宅」を語るVTRが人目を引くが、三分一博志氏の「直島ホール」のVTRをまずは見たい。100分の1模型では風洞実験にて、6分の1模型では現地にて方位を変えつつ自然換気のスタディを重ねたという。ただ、模型の大きさを表す「○○分の1」につられて、VTR中の字幕で設計者名を「三分‘の‘一」と書いてしまったことには草も生えよう。
作品名:《待庵》
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第4展示室のテーマは「建築としての工芸」。
高度な匠の技を駆使した、吉田五十八氏の「ロイヤルホテル メインラウンジ」などが並ぶ中、自力でビルを建てる男・岡啓輔氏の「蟻鱒鳶ル」が異彩を放つ。
妙喜庵の茶室・国宝「待庵」の原寸模型がある小部屋もここだ。中に入ることも可能だが、休日には長蛇の列となることだろう。
作家名/作品名:丹下健三/《住居(丹下健三自邸)》模型
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第5展示室のテーマは「連なる空間」。
「世界のタンゲ」 と言われた丹下健三氏の「香川県庁舎」など、日本の伝統的な空間とインターナショナルスタイルとの幸福な邂逅をした時代の名建築が並ぶ。麻布地区近傍においては、解体が予定されていた聖坂の「クウェート大使館」が丹下氏の作品として親しまれているが、SNS上のうわさではそのまま使われることになったという情報もある。前出の「蟻鱒鳶ル」は、筋向いに建設中でもあるため、近くに寄られた際は合わせて楽しみたい。
この部屋の一角にはライゾマティクスのインスタレーションのコーナーもあり、その今日的な表現が刺激的だが、メインのスペース中央で圧倒的な存在感を放つ模型がある。丹下健三自邸の1/3模型だ。美しいプロポーションには誰もが吃驚することだろう。そのピロティからサヴォア邸を、 コンポジションからファンズワース邸を想起させるとも言われるが、空間体験はPaulo Mendes da Rocha自邸に近いのではないかと本紙文化班は拝察する。
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第6展示室「開かれた折衷」では、築地本願寺の設計者として広く知られる伊東忠太の展示が出色。中でも世界各地を巡った際の野帳は素晴らしい。およそ100年前に描かれたスケッチの生き生きとした筆跡からは、未知なる造形や風俗を目にし、躍る心をおさえ切れないままにペンを走らせたことが見て取れる。建築博物館のウェブサイトでも一部公開されているが、やはり対象への愛すら感じさせる迫力が伝わってくるのは、現物なればこそだ。
第7展示室「集まって生きる形」では、若者のシェアハウス、農業を通じた新しいコミュニティの実践など 様々なスタイルで人々が集合しながら生活する建築が紹介されている。中でも「52間の縁側」で設計者の山崎健太郎氏が「寛容な建築が求められていると感じた」と語るVTRは必見だ。
第8展示室「発見された日本」は、外国人の目で見た日本の建築が語られる。日本で実作を残したアントニン・レーモンドやフランク・ロイド・ライトの話は多くの人が知るところだが、デイヴィッド・アジャイなど現代で活躍する建築家にも大いに影響を与えていることがわかる。繰り返し「発見」され続けていることは、日本の建築が古来より「本質」を極める姿勢に満ちていることの証左となろう。
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最後のセクション第9展示室のテーマは「共生する自然 」。
日本人の自然観と建築に関する展示。「共生」の言葉からは、あいまいな境界性や新自然的な建築をイメージするが、鋭く対立することで自然を強く感じる存在となっている建築も含まれていることで、展示の厚みを増している。
連休の中日とは言え、平日の昼間にも関わらず多くの方が来場されていた。外国からの旅行者と思われる方も少なくない。得てして人気の展示は、後半になればなるほど来場者数が増える傾向がある。閉幕までまだあるなどと安穏と構えずに、早めの観賞をお勧めしたい。
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